princeton.log

Princeton 大学の Department of Computer Science に一年留学する日本人が、学んだことや感じたことを綴ります。

GPA

f:id:liwii:20200204044750j:plain このあいだのキツネが好評だったので先週見つけたキツネを貼っておきます。
さて、月曜日から春学期が始まりました。なんだかんだ2ヶ月近く授業がなかったので、久しぶりに色々な講義に出られるのは楽しいです。1週間くらいこの気持ちが続くといいなあ・・・
と、同時に先学期の成績も返ってきたので、今日は成績評価の話をします。

GPA

日本の大学で試験の結果について話すときは、単位をとった/とってないが話題にのぼることが多く、試験で何点とったとか評価がAだったかBだったかについて話すことは比較的少ない気がします(僕の大学は進学振り分けという制度があるのでその限りではありませんが・・・)。
一方で、プリンストンで単位が取れたかどうかの話をしている人はあまりみたことがありません。どの授業も評価のうち試験の点数のしめる割合は20~50%くらいで、残りは宿題や出席点によって決まるからです。宿題はちゃんとやればかなりの割合の点数がもらえるので、期末試験を受ける頃には多くの人はもうすでに単位がもらえることが確定しています。そのため、期末試験のあとに単位が来るかについて気を揉む必要がないわけです。実際に、授業の単位を落としている人はほとんどいない気がします。
その代わり、GPAを気にしている人は日本よりは多い気がします(個人の見解です)。念のために補足すると、

GPA(Grade Point Average)とは、各科目の成績から特定の方式によって算出された学生の成績評価値のこと、あるいはその成績評価方式のことをいう。米国の大学や高校などで一般的に使われており、留学の際など学力を測る指標となる。*1

と、いうことで、要はどのくらい成績が良かったかを示すスコアです。アメリカでは就職や大学院への出願の際、このGPAを提出しなければならない場合が多いです。もっとも、「就職や大学院入学にGPAはあまり関係がない」という英語の記事は調べると山ほど出てきます(僕もそれはごもっともだと思います)が、あんまり低いと見栄えが悪いので割と気にしている人は多い気がします。

Grading System

プリンストンでは、成績は基本的に以下のような12段階で評価され、*2

  • A+ Exceptional; significantly exceeds the highest expectations for undergraduate work
  • A Outstanding; meets the highest standards for the assignment or course
  • A- Excellent; meets very high standards for the assignment or course
  • B+ Very good; meets high standards for the assignment or course
  • B Good; meets most of the standards for the assignment or course
  • B- More than adequate; shows some reasonable command of the material
  • C+ Acceptable; meets basic standards for the assignment or course
  • C Acceptable; meets some of the basic standards for the assignment or course
  • C- Acceptable, while falling short of meeting basic standards in several ways
  • D Minimally acceptable; lowest passing grade
  • F Failing; very poor performance

それぞれに以下のような点数がつきます。*3

  • A+ = 4.0 (4.3 prior to 2000-2001)
  • A = 4.0
  • A- = 3.7
  • B+ = 3.3
  • B = 3.0
  • B- = 2.7
  • C+ = 2.3
  • C = 2.0
  • C- = 1.7
  • D = 1.0
  • F = 0

これを全ての教科について平均したものが、4点満点のGPAになります。
昨年の成績の統計を大学が公開していました。*4これによると、昨年の全教科の評価の平均は3.48。学生全体の30%ちょいがAまたはA%、そして20%ちょいがA-の評価を受けられるようですね。
ちなみに、A+はAとGPAが変わらないので、存在するのは完全に名誉のためです。学生にA+を出すには講師が特別な手続きを踏まないと行けないそうなので、教科によっては一切A+が出ないこともあるようです。

P/D/F

こういう風に全ての科目の成績を平均化して評価すると、どうしても学生が自分の苦手な教科を少なくとってしまいがちです。それを防ぐために、プリンストンにはP/D/Fという制度があります。
各セメスターのちょうど中頃に、プリンストンの学生は自分の履修している教科のうちをP/D/F科目として登録することができます。これに登録されると、成績評価のうちA+ ~ C- が全て "P" と表示されるようになり、該当科目はGPAの計算から除外されるそうです。これが存在することで、自分の苦手な科目をとっても、高い成績が望めなさそうだと感じたら途中でP/D/Fに登録すればいいため、GPAをある程度気にすることなく授業が選べるという訳です。

参考:僕の成績

参考までに、僕の成績を載せます。 f:id:liwii:20200204044757p:plain コンピューターサイエンスの授業はだいたいいい評価をもらえたので安心しています。ですが、Computer Visionの評価なんかは完全に僕のパートナーがFinal Projectを頑張ってくれたおかげなので本当に感謝ですね・・・。一方で、Information SecurityでA+がもらえなかったのはちょっと悔しいです。
反面、歴史の授業はA-でもめちゃくちゃ嬉しかったです。完全に専門外の分野だったので、アドバイスをくれたPreceptorなどの皆さんのおかげだと思います。

日本(東大)と比べてどうなのか

さて、ここまで一連の流れを日本にいた時の東大のものと比べると、色々と思うところがあります。
まず、プリンストンの成績の付け方の方がはるかにクリアであると感じました。プリンストンの授業では、あらかじめ

Assignments 10% (x 6 assignments)
Midterm Exam 15%
Final Exam 25%

のように、成績評価のどのくらいの割合を何が占めるかがはっきりと占められています。そしてそれぞれの宿題や試験の点数は採点された答案と共にオンラインまたはオフラインで成績の開示前に返ってきます。その上で、「あなたの宿題は〇〇点、試験の点数は〇〇点、だから平均すると〇〇点、よって評価はA-です」と言われる訳なので、反論の余地がありません。
一方東大では、多くの場合成績の評価についてはシラバス

講義への参加意欲・小テスト・課題の成績を総合して評価する。

のような一文があるだけで、提出した小テストや課題はほとんどの場合一切返却されません。そして学期の最後に、最終成績だけが急に返ってくる訳です。小テストが悪かったのか課題が悪かったのか、はたまた小テストのどこを間違えたのかなどは一切わからない訳です。
これはなんとかした方がいいと思います。特に東大には進学振り分けという、成績に基づいて専攻を決めるイベントがある訳です。そんな人生の一大イベントがこのようなブラックボックスに左右されるのはあまりに不健全であったなあと、外に出てみて改めて気づかされました。
また、プリンストンの方が高いGPAが出やすいようにも思います。前述のように、プリンストンの成績は12段階で評価されるのに対し、東大の成績は 優上/優/良/可/不可 のわずか五段階で評価され、GPAに換算するときにはそれぞれ 4.0/4.0/3.0/2.0/1.0 がつけられることが多いです。東大の成績評価尺度の方がはるかに粗いため、例えば平均よりちょっとだけ上の評価をされた学生がいるとすると、プリンストンのシステムだと4点満点中3.7点がつけられるのに対し、東大のシステムだと4点満点中わずか3点しかもらえません。プリンストンではさらに、自分に不利になりそうな成績をP/D/Fによって隠す、ということもできる訳です。
これはちょっと不公平だなあと思います。非常に大雑把な感覚ですが、同じ学生でもプリンストンにいる方が0.1 ~ 0.3点ほど高いGPAが出るような気がします。例えば海外の大学院に出願するときに、これによって合否が左右されるかもしれないと考えると・・・。「就職や大学院入学にGPAはあまり関係がない」という記事が本当であることを願いたいものです。

今週はこんな感じで終わりです。来週書くことのアイデアは今の時点では全く思い浮かんでいないのですが、なんとかひねり出せるように頑張ります。