princeton.log

Princeton 大学の Department of Computer Science に一年留学する日本人が、学んだことや感じたことを綴ります。

春学期の授業の振り返り

ご無沙汰しております。皆様、この大変な状況の中でいかがお過ごしでしょうか。
僕はというと、5/15に最後の課題を提出し、2ヶ月間にわたるオンライン留学、そして8ヶ月間の交換留学プログラムを終了しました。本当は日本に戻った後も毎週その様子をリポートしたかったのですが、環境の変化を言い訳にして先延ばしを続け、気づけば帰国後一つの記事も書くことなく留学の終わりを迎えてしまいました・・・
とはいえ、せっかく続けてきたブログなので、しっかりとした形で終わらせてあげたいという気持ちもあります。という訳で、今回は今学期の授業の振り返り、次回は留学生活全体の振り返りをして、このブログを締めくくりたいと思います。

オンライン授業と時差

個々の授業について掘り下げる前に、まずは2ヶ月間日本からアメリカのオンライン授業を受け続けた感想を書いていきたいと思います。
現在の日本とプリンストンの時差は13時間。つまり、ほぼほぼ真逆のタイムゾーンにいることになります。僕の今学期のプリンストンでの授業は全てアメリカでの午後に集中していて、日本時間に直すと午前2:00~6:00の間になっていました。正直あまり起きていたくない時間帯ではありますが、録画を提供してくれる授業が少なく、またせっかくの機会なのでしっかり質問したりしたいなあという思いもあったため、出来るだけリアルタイムで出席できるように頑張ってみることにしました。
という訳で、3月の下旬から僕は超極端な早寝早起き生活を始めました。毎日午後8時には寝て、午前2時に起きて授業を受ける。半年前の僕が聞いたらギョッとしそうなスケジュールですが、時差ボケが残っていたこともあり、始めた当初はそこまで苦ではありませんでした。むしろ、午前6時には全て授業が終わり、1日が自由に使えるという状況を楽しんですらいた気がします。
しかし、そんな生活も長くは続きませんでした。家族と一緒にご飯を7~8時くらいに食べていると、まず就寝時間が9時、10時にずれ込んで行きます。そのうち日本の友人とのオンライン飲み会なんかも始まり、だんだんと普通に夜更かしをするようになっていきました。2時から5時まで授業なのに、気づいたら1時まで起きてしまっていてこの後どうするか悩んだことも何度かあります。いっそのこと授業が終わるまで寝ない、という選択肢も何度か試したのですが、ほぼ徹夜の状態で午前4時や5時になるとほとんど授業が理解できないということがわかり、結局最後の方はたとえ1~2時間でも授業の前には必ず寝るようにしていました。
2時間だけ寝て、午前2時のアラームで飛び起き、家族を出来るだけ起こさないように急いで音を止めてからZoomを開く日々。貴重な経験ではありましたが、最後の週までくると正直かなり辛かったです。結局、授業を寝過ごしたのは1回だけで済みましたが(自分でいうのも何ですが結構偉いと思います)、あと2週間授業が続いていたら耐えられなかったと思います。ちゃんと朝に起きて夜に寝られるって素晴らしいことですね。

個々の授業の振り返り

ここからは、秋学期の記事と同様に、とった授業を一つずつ振り返っていきたいと思います。

PHI 371 Philosophical Foundations of Probability and Decision Theory

概要

様々な確率に関するパラドクスを取り上げ、Bayesian Confirmation Theory などの基本的な定理を使ってそれらのパラドクスを検証していくような内容でした。
例えば、中間レポートでは以下の Ravens Paradox と呼ばれるものを扱いました。

  • 黒いカラスを見ると「世の中の全てのカラスは黒い」という仮説が確からしくなる気がする
  • ということは、カラスでなくて黒くないものを見ると、「世の中の全ての黒くないものはカラスでない」という仮説を確かめられるはずだ
  • 「世の中の全ての黒くないものはカラスでない」は 「世の中の全てのカラスは黒い」と論理的に等しい
  • ということは、カラスでなくて黒くないものを見ると、「世の中の全てのカラスは黒い」という仮説を確かめられるはずだ

つまり、みなさんが家のクローゼットを開けて、黒くないTシャツを見つけるたびに、世の中の全てのカラスが黒いことを確認できるというわけです。本当にこんなことが起こるのでしょうか。おかしいとしたら、どこが間違っているのでしょうか。みなさんはどう思いますか?

感想

これは哲学科の授業なので、「哲学の授業受けてましたって言えたらかっこよくね?」と思って受講を決めたのですが、割と初等的な確率の数式を用いて議論をすることが多く、あんまり哲学をやっている感はなかったです。その分Reading がとっつきやすかったり、授業中のディスカッションについていきやすかったりしたので、あんまり苦しまないで済んでよかったのかもしれません。
それでも、「この定理には、『未来に起こることを知っていたらこの確率は1』と書いてあるけど、そもそも『知っている』ってどういうことなんだろう?」などの定性的な議論をすることも多く、自分が普段やっている学問と少し違った切り口を感じることはできました。一緒に授業を受けている哲学専攻の学生がめちゃくちゃ教授に食ってかかっているのを見るのも面白かったですね。
そしてこの授業が一番オンラインになったことが残念だった授業でもあります・・・ そもそもディスカッションの時間が大幅に縮小された上に、オンラインだと議論に切り込むタイミングを取るのが難しく、日本に帰ってきてからの授業ではほぼ議論に参加することができませんでした。せっかくの機会を活かせず残念ですが、また似たようなことができたらぜひリベンジしたいと思います。

COS 488 / MAT 474 Introduction to Analytic Combinatorics

概要

様々なデータ構造の性質について、定量的に検証する授業でした。例えば「ランダムに生成された二分木の平均の高さは?」や「ランダムに生成されたバイナリ文字列の中で0が4つ連続する確率は?」などが授業で扱われた問題です。
具体的には、様々なデータ構造を生成関数として表現し、その関数同士を足したり掛けたりしてより大きいデータ構造を作っていくという手法をどんどん掘り下げていきました。後半になればなるほど、近似式で答えを表すことが多くなっていくのですが、その場合でも最高次の項の係数までは具体的に導出することを求められました。
そしてここが最大のポイントなのですが、キャンパスが閉鎖される前から授業は全て録画済みのYouTubeビデオで行われました。僕たちが受けていた授業ビデオおよび課題は全て以下の二つのページで公開されているので、興味があって時間もある方はチェックしてみてはいかがでしょうか。

Introduction to the Analysis of Algorithms by Robert Sedgewick and Philippe Flajolet

Analytic Combinatorics Philippe Flajolet and Robert Sedgewick

感想

流石に秋学期に数学をやらなさすぎたことを反省してとった授業でしたが、「数学っぽいことをやる」という目的は達成できたように思います。単純な微分積分や無限級数などについて学部に入ったばかりの頃に学んだことを思い出すことができましたし、毎週の課題によって英語で数学の答案を書くことにもなれた気がします。
授業の内容も非常によかったと思います。今まで僕が知っていたような方法だと数え上げるのが難しい複雑な構造でも、後半になって新しい定理を導入するにつれてどんどん簡単な式で表せるようになっていったのが面白かったです。(それと同時に宿題を解くのが簡単になっていったのも嬉しいところですね)
実は僕は履修を決めた当初はこの授業が全てビデオ講義であることを知らず、それを知らされた時には少しがっかりもしたのですが、今になって思えばビデオ講義も悪くなかったなあと思います。講義が全てYouTubeに上がっているおかげで、キャンパスにいた間は柔軟に時間を使えましたし、日本に帰ってきてからもちゃんと日の出ている時間帯に授業を受けることができました。
ちょっと残念だったのは担当の先生と直接話す機会があまりなかったことですね・・・この授業を担当されている Robert Sedgewick 先生は赤黒木などの有名なデータ構造を考案した大変すごい方なのですが、ビデオ授業なこともあってほとんどお会いする機会がなく、実際に対面できたのは3回ほどでした。お忙しいのか、オフィスアワーとして指定された時間に伺っても不在だったこともあり、非常に悲しかったです。またいつかどこかでお会いできるといいなあ・・・

COS 510 Programming Languages

概要

大学院の授業その1。授業の名前から受ける印象とは少し違い、プログラムの形式的検証の授業でした。前半はシンプルな定理の証明を通して Coq という定理証明系の使い方について学び、後半は Coq を使って実際にプログラムの性質について検証を行いました。例えば最終課題では、C言語で書かれたハッシュテーブルを使ったプログラムが予期した動作をすることを Coq 上で証明しました。

感想

秋学期にとった授業の中で一番好きな授業でした。Coqを使った証明はパズルのようで非常に面白く、課題の量が多くてもほとんど苦になりませんでした。特に最後のC言語のプログラムに関する証明がしっかりできたときの快感は言葉では表しきれません。しかし、悪い意味でもパズルを解く感覚で臨んでしまい、しっかり証明の全体像を描かないまま色々な手段を気づいたら証明ができていた、ということも多々ありました。中には証明はできたものの意味はよくわかっていない定理なんかもあります。これからはこういうところを改善していかなければならないなと思っています。
担当だった Andrew Appel 先生にも非常にお世話になりました。先学期も Appel 先生の授業を履修していたため、幸いなことに名前を覚えていただき、直接アメリカの大学院の仕組みについて解説していただいたり、夏休みの間に学部生が Coqを使って参加できるプロジェクトを紹介していただいたりしました。本当に先生の授業を一年間続けて履修して良かったなあと思います。おそらく僕が将来研究する分野もこの辺りになると思うので、先生のご厚意に報いられるようしっかりと勉強していきたいと思います。

COS 529 Advanced Computer Vision

概要

大学院の授業その2。その名の通り、秋学期に開講されていた Computer Vision の発展版です。カメラ画像からの三次元点群の復元や、ディープラーニングを使って与えられた画像に関する質問に答える技法 (Visual Question Answering) など、幅広いトピックを扱いました。

感想

こちらも非常に楽しかったです。秋学期に受講した学部生向けの Computer Vision では、色々な手法が紹介されてもなぜそれでうまくいくのかの解説がほとんどないことが多かったのですが、こちらの授業ではしっかりと手法の背景まで解説してくれることが多かった気がします。また課題についても、Computer Vision では渡されたプログラムの穴を埋めるだけのことが多かったのですが、今回は課題の解説のPDFのみを渡されて、まっさらな状態から指示通りに動くシステムを作らねばならなかったので非常に歯ごたえがありました。しかし当然その分だけ時間もかかり、例えば Visual Qustion Answering では最初に書いたコードが全くうまく動かず、丸二日かけてデバッグをしたりしました。今となってはいい経験ですね。
この授業には自由に実験をしてPDF8枚にまとめるという最終課題があり、僕はイギリスからの交換留学生二人と一緒に取り組みました。僕たちが選んだテーマは「人工データを使った人の動作の学習」です。
f:id:liwii:20200607163131p:plain こんな感じで人の3Dモデルが動いている動画をたくさん生成して、これらを使って学習することでリアルな動画の中で人の動作を検出できないか試しました。結果としては、少なめのリアル動画を訓練データとして使った場合と同じくらいの精度が出ました。
僕はビデオの生成係だったので、上のような白い人間が動いている動画をたくさん作っては実際の学習を担当するチームメイトに渡していました。これは完全に余談ですが、ノリでプロジェクト名を "Naked People" にしてしまったので、僕は送る動画のファイル名は全て "naked-videos.zip" という名前でした。何も知らない人が見たら大変な誤解をしてしまいそうですね・・・
とはいえ、今回は最終的な成果にそれなりに貢献できた気がします。僕は先学期の Computer Vision の課題ではパートナーに頼りっぱなしでほとんど仕事ができていなかったので、そのリベンジが果たせて良かったです。また、イギリスの二人とも最終課題のために帰国後も連絡を取り合い、非常に仲良くなることができました。またすぐ会いに行ったりできるようになるといいなあと思います。

Independent Work

概要

プリンストンの3年生が受講する個人プロジェクト授業、 Independent Work。僕は今学期は Brian Kernighan という先生にアドバイザーをお願いして、YAML という形式のファイルからパワーポイントのプレゼンテーションを生成するプログラムや、生成されるプレゼンテーションをリアルタイムでプレビューできるプログラム、そして二つのプレゼンテーションファイルの差分を表示するコマンドラインツールを作りました。 Image from Gyazo

github.com

github.com

(今 GitHubに上がっているバージョンにはバグがあるかもしれませんが、大目に見てください・・・)

感想

Kernighan 先生は現在のコンピューターの基礎を作った一人と行っても過言ではない方で、プリンストンへの留学が決まった時から是非お会いしたいと思っていました。そんな方と直接お話しできるだけでも嬉しいのに、まさか定期的にお会いしてアドバイスをいただけるとは思ってもいませんでした。 実際の週に一回のミーティングも、帰国前も帰国後も変わらず、僕の作っているツールに対して「こんなものを足してみたらいいんじゃないか」など具体的な提案をいただいたり、時には先生が日本に行った時の経験について話していただいたりなど、夢のような時間でした。一生忘れることのない経験になったと思います。
一方で、本題であるプロジェクトには少し悔いが残っています。いい感じの Python のライブラリを見つけてしまったので、そこまで苦労することなく当初予定していた内容は実装できてしまい、残った時間で何をしようか思案していたら学期が終わってしまいました。せっかく色々アドバイスをいただける環境だったのだから、もっと頑張って色々挑戦すれば良かったなあと思ってしまいますが、終わってしまったものは仕方ありません。幸い、自分でこれから使っていこうと思える程度には完成したので、これから使いながら直していきたいと思います。

最後に授業を受けてからもう1ヶ月近く経っているので、ところどころ記憶があやふやなところがありますね・・・まあ雰囲気だけでも伝わって欲しいです。
次回はいよいよブログの最終回です。みなさんもう少しだけお付き合いください。

さよならプリンストン

前回、「プリンストンに残るつもりだ」という旨を最後に書かせていただきました。ところがそのあと状況が変わり、僕は今日本の実家にいます。
今日は、日本に帰ることになった経緯も含めて、ここ1週間の大学の動きについて書いていきます。

3/11

キャンパスのお祭り騒ぎ

この日は、キャンパスの事実上の閉鎖が通達された日です。突然残り少しになってしまったキャンパスで友人と過ごせる時間を最大限楽しむためか、この日はそこかしこでお祭り騒ぎが見られました。
例えば、僕が自室でこれからどうするか思案しているとき、何発か花火が上がりました。
f:id:liwii:20200320182110j:plain 花火ってそんなに簡単に調達できるものなんですかね・・・スピードに感心してしまいます。
また、大勢の人が一箇所に集まってただ叫ぶという謎のイベントも開催されていました。

暗くて誰がいるかもわからない中で大声がただ響き渡るのは非日常感があってなかなか楽しかったです。
他にも、寮のそこらじゅうの部屋から大音量の音楽と話し声が聞こえてきました。ウィルスの感染リスクを考えるとあまり奨励されない行為ではあると思うのですが、この日が最後になってしまう子もある程度いることを考えると、大目に見てほしいなあというのが個人的な意見ですね。

ヨーロッパからの入国制限

キャンパスで起きたことではないのですが、この日にはヨーロッパ諸国からアメリカへの渡航制限も発表されました。

www.bbc.com

これに伴って、CDC (米国疾病予防センター) もヨーロッパのほぼ全ての国々への渡航警戒レベルを3に引き上げました(この時、日本の警戒レベルは2です)。出身地域を理由にキャンパスに残る申請をする際には、CDCの警戒レベル2または3が必要とされていたので、これでキャンパスに残る申請ができる人の数が一気に増えることになりました。

3/12

Take-home midterm

この週は春休みの1週前。本来、中間試験などがたくさん予定されていました。僕も例外ではなく、この日に1つ Take-home midterm (自分の部屋でやる中間試験) が予定されていました。
友達に聞いた感じだと、延期された試験もあるようなのですが、この授業では特にそういうアナウンスはありませんでした。正直精神的には試験どころではなかったのですが、こうなってくると受けざるを得ません。
実際、問題を解いている最中もちょっとソワソワしてしまいました。割と簡単に作ってくれていたようなので良かったのですが、もうちょっと難しかったらどうなっていたことやら・・・

去る人々

この日から早くも自宅に帰っていく人がちらほら見られるようになりました。
こちらは Storage サービスに並んでいる人の写真です。
f:id:liwii:20200320181147j:plain
荷物を来学期まで預かってくれるそうで、来学期もキャンパスに戻ってくる人々によって長蛇の列ができていました。
また、学生を迎えにきた家族の車もたくさん停まっていました。 f:id:liwii:20200320181317j:plain こうしたものを見て、人がキャンパスからいなくなっていくのを実感し、寂しくなったのを覚えています。

Poe Field

プリンストンのキャンパスの南端には Poe Field と呼ばれるグラウンドがあります。この日は、Poe Field でパーティーが行われるという噂が耳に入ってきました。Eating Club などのパーティーができそうな建物は全て閉鎖されていたので、そのかわりに屋外でパーティーを開こうというわけです。
のぞいてみると、小雨が降っているにも関わらずたくさんの人がやってきて踊っていました。

真ん中に置いてあった結構しっかりしたスピーカーから、結構しっかりした音楽が流れていました。どこから持ってきたんだ・・・
一応学校側としては50人以上の集会を禁止していたので、最終的に PSAFE (学校の警備をしている人々) がやってきてパーティーはおひらきになりました。

まあ学校の対応はもっともですね。正直、屋外とはいえ100人ほどが密集している場所に突っ込むと色々なリスクが伴うので、僕も軽率な行動だったなあと少し反省しています。

3/13

えっ、残れない?

僕は3/11の時点でキャンパスに残るための申請をしていたのですが、この日にこんなメールが届いてしまいました。
f:id:liwii:20200320182152p:plain 要は「非常事態なので残るための条件をめっちゃ厳しくしました。あなたは条件を満たしてません。ごめんね。3/19までにキャンパスから出てください。」ということです。
僕が申請をした時点では、CDC 警戒レベル2の日本から来ていればキャンパスに残る要件を満たしていることになっていたので、このメールにはすごく驚きました。しかし、周りの友人にも聞いてみたところ、韓国や中国から来ている人も同じようなメールが届いていました。大学側がヨーロッパの状況を重くみて、比較的事態が深刻でないアジア諸国からの学生には帰宅要請をすることにしたのでしょう。こうなってくると日本に帰らざるをえません。
そもそも、このメールを受け取る以前から、僕は帰国した方がいいのではないかと薄々感じていました。この時点でニューヨーク・ニュージャージー両州の新型コロナウィルス感染者は増え続けており、またプリンストンの職員2人に陽性反応が出るなど、キャンパスも感染リスクがないとはいえない状態になっていました。もしプリンストンで罹患して万万が一重症した場合、僕は仕組みがよくわかっていない上に世界的に評判のよろしくないアメリカの医療機関にお世話になることになります。ちょっとそれは避けたいなあというのが正直なところでした。
と、いうわけで両親とも相談の上3/17発の日本行きのチケットを確保。日本に帰ることを決定しました。

3/14

Dining Hall の(ほぼ)閉鎖

この前の日から、5つあった学部生用の Dining Hall は 1つを除いて全て閉鎖されていたのですが、この日からそこでも Dining Hall に残って飲食をすることが禁止になりました。学生は各自ご飯をよそってもらって、自分の部屋に戻って食べろというわけです。
キャンパスに残っている人が少なくなっていたとはいえ、食事の提供元が1箇所に集約されたため、Dining Hall にもある程度人が集まっていました。
f:id:liwii:20200320181237j:plain 持って帰れる食事はこんな感じです。
f:id:liwii:20200320181339j:plain 帰国の日まで4日間、このような食生活が続きました。料理自体は普段提供されているものとそこまで変わらないのですが、1つの Dining Hall しか選択肢がないのが災いし、料理のバリエーションが極端に少なかったです。毎日同じようなものを食べ続けたため、最終日には結構つらくなってしまいました。

建物の封鎖

また、キャンパス内にはテープを使って封鎖されている施設がいくつかありました。
f:id:liwii:20200320181243j:plain f:id:liwii:20200320181324j:plain 大学側の正確な意図は正直わからなかったのですが、1枚目の写真に写っている Whitman では消毒剤的なものが撒かれていたりして、なにやら不穏な空気を感じましたね・・・

やっぱり残れる?

この日の夜には、こんなメールが届きました。 f:id:liwii:20200320182208p:plain 要するに「キャンパスに残っていいよ!」っていうことです。しかし、これは前日に受け取ったものと正反対の内容である上にそのことについての言及が一切なく、僕は初めてみたとき相当困惑しました。メールで説明を求めると、「再検討の結果OKになった。行ったり来たりで申し訳ないけど、不確定要素が多い状況なので大目にみてほしい。でも、自宅に帰れるのであれば帰ることをおすすめする。」という返信が帰ってきました。
かくして、僕はキャンパスに残ろうと思えば残れる状態になったわけですが、1度した「帰る」という決断を覆す気にはなかなかなれませんでした。前述のように、個人的にも帰った方がいいのではないかと思っていたこと、また学校側も帰ることを推奨していることも相まって、結局当初の帰国するという結論は揺るぎませんでした。

3/16

人のいないキャンパス

このころになると、キャンパスにいる人の数はグッと減っていました。 f:id:liwii:20200320181306j:plain f:id:liwii:20200320181345j:plain 聞いたところによると、結局キャンパスに残るのは約500人、その多くが卒論のために残らなくてはいけない4年生ということです。実際、最初はキャンパスに残ると話していた友達も、多くは結局帰宅していたように思います。

部屋の片付け

さて、僕はこの前日までパッキングを始める気がなかなか起きず、宿題(急を要さない)をやったり、お世話になっていた人に挨拶に行ったりして時間を使っていました。その結果、出発の前日であるこの日になっても1つも出発の準備ができていませんでした。流石にこれではまずいので、重い腰をあげて出発の準備をはじめました。
とはいえ、部屋の中にある処分に困るものは冷蔵庫くらいです。OIP (Office of International Programs) という、交換留学生のお世話をしてくれる部署がいらないものの寄付を受け付けてるということだったので、そこまで冷蔵庫を運ぶことにしました。
U-Store (生協みたいなところ) で運搬用の台車を借りることができたので、それに冷蔵庫をのせ、 f:id:liwii:20200320181255j:plain OIPまで持って行きました。 f:id:liwii:20200320181225j:plain 次の交換留学生が有効活用してくれるといいなあと思います。
このように、冷蔵庫は無事処理できたのですが、結局この日はそれに満足してしまいあまりパッキングが進みませんでした・・・

3/17

パッキング

前日までにほとんどパッキングができていなかったので、出発日であるこの日は早起きしてひたすら荷物を詰めることになりました。
最終的に、このように乱れたものが f:id:liwii:20200320181152j:plain この真ん中にある2つのスーツケースに収まりました。 f:id:liwii:20200320181332j:plain ちらほらものが残っているのですが、それは荷物に入りきらなかったので部屋に残して捨ててもらうことにします。「部屋にものを残して帰ると罰金を取られるかも」と友達に言われましたが、終わらなかったものは仕方ありません。

空港へ

その後、何ヶ月も一緒に過ごした交換留学生のみんなと最後の朝食をとり、ニューヨークにあるジョン・F・ケネディ国際空港に向かいました。東大からのもう一人の交換留学生が個人的なツテを使って空港への車を手配してくれたので、それに乗って空港まで直接向かうことができました。感謝です。
ANA便が発着するターミナルは割と小さかったのですが、それを差し引いても空港にいる人はかなり少ないような印象を受けました。
f:id:liwii:20200320181411j:plain f:id:liwii:20200320181422j:plain 飛行機もかなり空いており、例えば僕の席の横にあった3席はなんと全て空席でした。おかげで足を伸ばして寝ることができました・・・

帰国

そして14時間後。ついに半年ぶりに日本に帰ってきました。
f:id:liwii:20200320181402j:plain 久しぶりの日本はどこか不思議な感じがしました。どこに行っても日本語で不自由なくコミュニケーションを取れることに安心感を覚えつつ、思ったより早く帰ってきてしまったことを実感させられ、どこか寂しい気持ちもしました。

と、いうわけで、僕は日本に帰ってきました。帰ってきてしまいました。ここまでも書いたように、僕は割と人の集まるところに行ってしまっているので、ウイルスをもらってしまっていう可能性がゼロとは言い切れない気がします。そのため、2週間くらいは自宅で大人しくしていようと思います。
なんどもいうように、正直こういう形で帰国になってしまったことはすごく寂しいです。しかし、オンライン授業という形で僕の「留学」はまだまだ続きます。この経験をバネに、残り少ない授業から少しでも多くのものを学びたいと思います。
このブログも、授業が続いている間は更新を続けて行きたいと思っています。(毎週書くことがあるかはわかりませんが・・・)。オンラインという形ではありますが、授業の雰囲気などを伝えていけるように頑張りたいと思います。それではまた次回。

プリンストン大学の新型コロナウィルス対策、そして・・・

プリンストンにも春がやって来ました。ここのところ青空が広がる天気が続き、キャンパスの木々には花が咲いたりしています。 f:id:liwii:20200311170417j:plain そんなとてもいい季節に、世界中で感染が拡大している新型コロナウィルス (COVID-19) の影響がプリンストンにもやって来てしまいました。今日は、この1ヶ月でプリンストンに何が起こったのか、そして現在はどういう状況なのかをお伝えしたいと思います。

2月初頭

2月の初めのの方と言えば、中国の感染者がかなり増え、日本でもコロナウィルスがかなり大きく報道されるようになって来た頃だと思います。
そんな中、春学期を迎えたばかりのプリンストンでコロナウィルス関連のニュースを聞くことはそこまで多くはありませんでした。一応、学期の間の休みに中国に行っていた学生に対しては14日間の自室待機指示が出ていたようですが、特にそれ以外の学生の生活に支障が出るようなことはなかったと思います。
このころの僕は、友人やSNS経由で流れてくる日本のニュースを見てもあまり実感が湧かず、むしろ「大変な時期に日本にいなかったのはラッキーかもしれない」と不謹慎ながら思ったりもしていました。

2月末

このころになると、プリンストンでもコロナウィルスに関連した出来事がちょくちょく起こるようになりました。
例えば、様々な国への交換留学プログラムがキャンセルされたことが挙げられます。すでにイタリアに留学していたプリンストンの学生は強制帰国を命じられ、中国や韓国などの国への予定されていた留学は全てキャンセルになりました。
そして日本も例外ではありませんでした。ちょうどこのころ、東大からの留学生2人とプリンストンから東大へ行く予定の学生で晩御飯を食べる予定を立てていたのですが、当日になって彼女に東大への留学が中止になった旨を伝えられ、ものすごく申し訳ない気持ちになったのを覚えています。

3月4日

3月に入ってからは大学からコロナウィルス関連での通達がそこそこ頻繁にくるようになりました。
その一つが3月4日に来たものです。大雑把に内容をまとめると、「中国、韓国、イタリアには絶対行くな。その他の国に関しても、特にアジアやヨーロッパの国々への不必要な旅行は控えてくれ」というものでした。ちょうど2週間後に春休みを控えていたので旅行を計画していた学生が多く、キャンセルになって残念だという声が周りでちらほら聞かれました。
かくいう僕も、スイスに旅行に行く予定だったのですが変更を余儀無くされました。まあ残念だが仕方ない、勉強を続けられるだけありがたい、というようなことを思っていた気がします。

3月7日

この日は月曜日だったのですが、前々日の土曜日にニューヨーク州で非常事態宣言がなされました。
Coronavirus in N.Y.: Cuomo Declares State of Emergency - The New York Times
ニューヨークとプリンストンはほぼ電車一本で繋がっているため、こうなってくるともう人ごとではありません。日本にいる家族や友人から心配の連絡もちょくちょく入ってくるようになりました。
しかし、キャンパスでの生活に変化はありませんでした。いつも通りの時間に起き、ダイニングホールでご飯を食べて、宿題をして、いつも通りの時間に寝る。極力ニューヨークに行かないようにする以外、特に変えなければいけないことはないように思われました。

3月9日

朝起きるとメールが届いていました。要約すると「今日から全ての授業は原則ビデオ通話で行う。この措置は春休みを挟んで3週間続く。春休みに帰宅する学生は極力自宅で待機するように」ということでした。
これは流石に衝撃でした。今日から教室に行く必要がなくなるのです。
とはいえ、各教授によって対応はまちまちで、この日は普通に授業をする教授も多かったです。例えば僕の受けている授業は全て教室で行われました。中には「こんな対応は馬鹿馬鹿しい。春休み明けからビデオ授業になるけど、この教室でビデオをとるからこっそり座っててもバレないよ」なんてことをおっしゃる教授もいました。

3月10日

前述の教授も含め、僕が履修している授業の教授全員から「明日からの授業は全てビデオです」っていうメールを送って来ました。
また、ハーバードが全ての学生に対して5日以内に待機するように命じたとするニュースも入ってきました。

edition.cnn.com

この日には、学生の間でも「ハーバードのようにプリンストンも全学生が退去になるのではないか」という噂が立ち始めました。この日の晩御飯は他の国からの交換留学生たちと一緒に食べたのですが、「もし追い出されたらどうするか」について話している時間が長かったように思います。

3月11日 (今日)

さて、時差の関係でこちらはまだ3月11日です。今日はキャンパスの至る所で大きな変化が見られました。
まず、アルコール消毒液を出す機械がキャンパスのそこかしこに置いてありました。
f:id:liwii:20200311174900j:plain 月曜日まではなかった気がするので驚異的な対応スピードですね。
ビデオ授業も始まりました。
f:id:liwii:20200311154514j:plain 少しでも快適に授業を受けようと、寮の地下室のモニターにビデオを繋いだ様子です。
内容がわからないことはないのですが、質問・発言をするハードルがものすごく上がるので少し窮屈に感じました。この授業では教授が簡単な2択の質問を出して生徒が答える、という場面がよくあります。教室で授業をしていたころは手をあげればよかったのですが、ビデオ通話だとみんなが一人ずつ "Yes" "No" と自分の意見を言うので非常にシュールでした。
また、料理を自由にとる形式だったダイニングホールでも、

  • 基本的にダイニングホールのスタッフの方に頼んで取ってもらう
  • 自分でとる形式の料理にはラップをする

などの対策が取られていました。 f:id:liwii:20200311124122j:plain f:id:liwii:20200311123917j:plain

また、いつもは賑やかな夜のダイニングホールは、料理の種類・きている学生の量共に大変寂しい状態になりました。 f:id:liwii:20200311193756j:plain

そして・・・

20:02

プリンストンから最後通牒が来ました。このメールを要約すると、

  • 家に帰れる学生は3/19までに寮を完全に退去すること
  • 残りの授業は学期が終わるまで全てビデオで行われる

ということになります。みんな薄々予期していたことなのでそこまでパニックにはならなかったのですが、それでもだいぶ早く来てしまった今年度の終わりを悲しむような声が聞かれました。
一応、CDC Warning Level 2 以上の国から来ている学生は残っても良いそうなので、Level 2の日本から来ている僕もキャンパスに残る申請をするつもりです。ですが、ここのところ状況が変わるスピードが早すぎるので、100%キャンパスに残れるのかは僕にもよくわかりません。
いずれにせよ、ほとんどの学生はプリンストンからいなくなってしまうので、僕のプリンストンでの「学生生活」はここでおしまいですね・・・このような形で突然終わりが訪れるとは1週間前には思ってもみませんでした。今思えば後悔もありますが、人の力の及ばないものなので仕方ありません。

さて、プリンストンでの生活もこのブログもどうなるかは今の所全くわかりませんが、続報が入り次第またお伝えしようと思っています。日本にいる皆様、耳にタコができるほどお聞きになっているとは思いますが、手洗いなどの対策をしっかりをして、感染に十分お気をつけてお過ごしください。

クラブ活動

先日、学内で開催されたビンゴ大会に参加してきました。
f:id:liwii:20200305210906j:plain 僕が予想していたビンゴ大会とは違い、1人あたり4枚のカードが配られ、10~20秒に1回数字が読まれると言う超ハイスピードなビンゴでしたが、それはそれで新たなゲーム性があって楽しかったです。
ちなみに、僕はTシャツを当てました。嬉しい。
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今日はプリンストンでのクラブ活動(日本でいうサークル)の話をします。

概要

プリンストンの学生は割と毎週課題に追われているため、日本の学生よりはクラブ活動に費やす時間は少ない気がします。それでも、学生たちは様々なクラブで精力的に活動しています。

ODUS

様々なクラブを含む学生団体は、ODUS (Office of the Dean of Undergraduate Students)という組織によって管理されています。

ODUS Student Organizations

詳しいことはあんまりよくわかっていないのですが、団体として使ったお金をODUSに申請すると一定の限度額まではODUSが負担してくれるようで、それがクラブ活動が盛んな理由の一つになっているのかなと思います。

クラブ紹介

ここからは、僕が参加したことのあるまたは友達が参加しているクラブを紹介していきたいと思います。

Clockwork

プリンストンにもスポーツ推薦のような制度があり、野球やアメリカンフットボールなどの一部のスポーツチームはそういう選手で構成されたセミプロのようなチームになっています。この間も、おそらく高校生の野球選手向け?のキャンパスツアーが開かれているのを目にしました。
というわけで、おそらく一般の生徒はそうしたチームに参加することはできないのですが、もっとカジュアルなスポーツクラブもたくさんあります。その一つがClockworkです。

Princeton Clockwork: Men's Ultimate Frisbee

これはアルティメットと呼ばれるフリスビーを用いて行う競技のクラブです。僕は最初の練習にだけ参加したのですが、思ったよりハードな競技だったので運動不足の体には厳しいと判断してそれ以降参加していません。
ここはAチームとBチームに別れており、Bチームは週に3回、Aチームは週に5~6回ほどの練習があると聞いた気がします。忙しい中でそれだけの練習時間を捻出できるのは素直にすごいなあと思いますね・・・近くの大学まで出かけて行って試合をしたりもしているようです。

KoKo Pops

プリンストンにはダンスや演劇などのパフォーマンスを行うクラブがいくつもあります。KoKo Pops もその一つです。これはK-popダンスを行うクラブで、授業を一緒に受けている友達の一人が所属しています。割と頻繁に練習はしているようで、とりわけ彼らの公演があった先週は1日5時間(!)ほどのリハーサルをこなしていたそうです。その友達も死にそうな顔で講義室に座っていたのが印象的でしたね・・・ 彼らは定期的に学内の劇場で公演を行っているのですが、面白いのはその公演のチケットが有料で販売されていて、しかも学校のウェブサイトから購入できるという点です。

https://tickets.princeton.edu/Online/default.asp

見た感じだと、演劇やダンスは1公演10ドル前後で販売されているものが多いような気がします。もっとも、プリンストンの学生であれば1学期に2回までは無料でチケットを手に入れることができます。僕も友達に頼まれて断りきれずにKoKo Popsのチケットを手に入れたのですが、この無料チケットのシステムがあって本当に良かったなあと思いました。
実際の公演は、開演前から劇場に長蛇の列ができるなど大盛況でした。 f:id:liwii:20200213200734j:plainf:id:liwii:20200229192001j:plain ダンスのクオリティも割と高かった・・・ような気がします。日本と比較しようかと思ったのですが、僕は東大のダンスサークルの人々の公演に行ったことがないので比べようがないですね・・・。帰ったら日本のサークルの人々が何をやっているのかをちゃんと見てみたいなあという気持ちになりました。

E-Club

Entrepreneurship Club の略です。起業に興味のある学生がいくつかのグループに別れて様々な企画を行なっています。
そのうちの一つが Hack Princeton という年に2回行われるハッカソンです。3日間に渡って校内で開催され、様々な企業がスポンサーとし商品を提供したり、別の大学からも学生が参加したりと、それなりに大規模なイベントになっています。 f:id:liwii:20191108173842j:plainf:id:liwii:20191108173927j:plain 最初の方に知り合った友達が何人かHackPrincetonチームにいるので、僕も参加させてもらいました。カナダのウォータールーからやってきた学生たちとチームを組んでちょっとした賞をとり、Twilio という会社から 50$ 分のアマゾンギフトをもらいました。おかげてたくさんインスタントラーメンを買うことができました。
僕も一応 Wed Development チームというのに所属しています。しかし、聞けばメンバーは3人、定期ミーティングもなく、特に今作っているものないということで、全く所属している実感がありません。まあその分勉強に時間を回せるとポジティブに捉えることにします。

Chocolate Club

チョコレートを作って、学内のイベントで売っているクラブです。確かカカオ豆から作っているということで、かなり本格的ですね。各工程ごとに班に分かれて、ダイニングホールの地下にあるキッチンで毎週活動しています。 プリンストンにいる日本人の友達に強く勧められたので、僕も一度参加しました。その友達はテンパリング(チョコレートを溶かしてもう一度固める作業。口どけが滑らかになるらしい?)をやっていたということで、僕もテンパリングの班に入ったのですが、

  1. チョコレートを電子レンジで溶かす
  2. かき混ぜつつ温度を測る
  3. 下がってきたら型に流す
  4. 冷蔵庫に入れる

と、シンプルな作業を静かにこなすと、「はい、今日は終わり。また来週ね。」と言われてしまいました。正直楽しさがわからなかったので、この回以降1回も行っていません・・・

Princeton ACM

ACM 自体は "The Association for Computing Machinery" の略で、有名なコンピューターサイエンスの学会です。 Princeton ACM はそのプリンストン支部だそうで、2~3週間に1回 Code@Night というプログラミング言語フレームワークに関するワークショップを行なっています。 僕も最近はたまに Code@Night に行くようになったのですが、頻度がかなり低いのであまり団体に所属している感はないです。僕のある友達は2年前からPrinceton ACM にいたそうですが、「2年前はもっと頻繁に活動していた気がするんだけどなあ」と残念そうに話していました。

JSA

Japanese Students Associationの略です。日本人・日系の学生が中心になって、お寿司やラーメンを食べるイベントなどを定期的に開催しています。
僕は一応この団体の Treasurer (会計) なので、イベントには積極的に参加しています。といっても、先学期の活動は2~3回でしたが。食べ物目当てでやって来てすぐに去ってしまう学生も結構いましたが、日本語を勉強している子たちが来て日本語で話しかけてくれたりしたのが嬉しかったですね。

以上、クラブ活動の話でした。正直僕にはあまり積極的に参加しているクラブがないので、実態を把握しているとは言い難いのですが、少しでも雰囲気が伝われば嬉しいです。
それではまた来週。

プリンストンでの1日

この間久しぶりに会った大学院生の友達が、毎週木曜日にスマブラ大会をやっているということを教えてくれたので、今週はお邪魔することにしました。楽しみだなあ。
今まで書いた記事に毎日の生活の雰囲気が伝わるものが少ないことに気づいたので、今日は僕がこの前の月曜日にやったことを時系列順に紹介していこうと思います。

8:45 起床

大学の中に住んでいると、急げば起きてから15分くらいで教室までたどり着けるので、どんどん早起きができなくなっていきます。特に今学期は、僕は午前11:00以前の予定が基本的にないので、毎日かなり遅くまで寝ています。8:45でも遅いと感じられる方がいらっしゃるかもしれませんが、これでもここ1週間ではダントツの早さです。

8:50 朝食

最近は朝食としてはバナナを食べることが多いです。f:id:liwii:20200226134608j:plain Dining Hall にはバナナがたくさん置いてあるので、Dining Hall で食事をした時に持って帰ってきて部屋の棚に溜めています(ルール上OKだったはず・・・?)。朝から調理をしたりご飯を買いに行ったりするのは正直面倒なので、サッと食べて動き始められるバナナはありがたいです。たまに持ち帰るのを忘れてバナナを切らしてしまうのですが、そういう時は仕方なく学内のカフェでパンなどを買って食べます。ちょっと高いんですよね・・・

9:10 洗濯

ご飯を食べて少しダラダラした後は、地下の共同スペースに洗濯に出かけました。早起き(?)したのも、前日寝る直前に次の日着るものがないことに気づいたからなんですよね。
地下には洗濯機と乾燥機がどちらも置いてあり、洗濯物を入れてスイッチを入れれば勝手に洗ったり乾かしたりしてくれます。 f:id:liwii:20200226134058j:plainf:id:liwii:20200226134104j:plain 便利なんですが、一体型だともっとよかったですね・・・30分待ってから乾燥機に移す作業が地味に面倒臭いです。

9:20 ビデオ講義

着るものがないので、洗濯物を待っている間に地下の共同スペースで勉強して時間を潰しました。 今学期に履修している Analytic Combinatorics という授業は「講義のビデオを自分でみてね!」というスタイルなので、開いた時間にビデオを見ながら勉強を進めています。 f:id:liwii:20200226134107j:plain ちなみに、写真に写っている Sedgewick 教授は赤黒木という有名なデータ構造を考案したすごい人らしいです。

10:45 シャワー

洗濯物が乾いて、着替えられるようになったのでシャワーを浴びにいきます。 f:id:liwii:20200226134143j:plain この写真は部屋から出てすぐのところで撮ったのですが、この "12M" と書いてある扉の向こうに共用のシャワールームがあります。f:id:liwii:20200226134148j:plain シャワー自体はこんな感じで、脱衣所のようなものは中にありません。なのでほとんどの人は自分の部屋でタオル1枚の状態になってから廊下を通ってシャワーまでやってきます。こっちにきた当初はびっくりしたのですが、結局それが一番楽なので僕も同じような状態でシャワーに行っています。
流石にシャワールームは男女別なのですが、問題は寮には男女がごっちゃごちゃに住んでいることです。僕がバスタオル1枚の時に出かける女の子とすれ違ったり、逆に僕が出かけようとしたらバスタオル1枚の女の子とすれ違ったりします。気まずい・・・

11:00 出発

11:00から授業があったのですが、シャワーを浴びてからボーッとしていたら普通に遅刻してしまいました。急いで部屋を出ます。
僕の住んでいる 1903 Hall はキャンパスのど真ん中にあって非常に便利なのですが、不幸なことに僕の授業のほとんどは Friend Center と CS Building というキャンパスの端っこである建物で行われるので、ゆっくり歩くと10分以上かかってしまいます。この日も、ダッシュで Friend Center まで向かいました。 f:id:liwii:20200226134200j:plainf:id:liwii:20200226144016j:plainf:id:liwii:20200226134204j:plainf:id:liwii:20200226134336j:plain いつも思うことですが、大学全体が綺麗なので歩いていて気持ちがいいですね。この日は快晴だったので特にそれを強く感じました。

11:10 授業

10分遅れで教室に到着しました。この授業は "Innovation Across Technology, Business & Markets" という授業で、新しいビジネスを始めるときに、エンジニアとビジネスサイドの人を繋げる人間になろう!」的な授業で、主にコンピューターサイエンスの学生向けにスタートアップのオペレーションの話などをしています。僕は実はこの授業を履修していないのですが、割と興味のあるトピックなので出来るだけ聴講するようにしています。そのうち TwitterDropbox の CEO も(多分)来ると聞いたので楽しみです。
この日はざっくりお金に関する話全般をしてもらいました。世界で最も有名な投資家の一人として、孫正義さんのエピソードがいくつか紹介されたのが印象的でした。

12:30 昼食

月曜日は無料のお昼を食べながら最新の研究についての発表を聞くイベントがあるので、基本的にそれに参加しています。まさに一石二鳥です。 f:id:liwii:20200226145352j:plain この日は、強化学習においていかに汎化能力の高いモデルを作るか、という話でした。「特定の行動価値関数を与えた時に、その行動価値関数の意図をより強く反映する"真の行動価値関数"をモデルに推測させる」みたいな話だったと思うのですが、強化学習自体をそこまでよくわかっているわけではないのでしっかりとした理解はできませんでした。もっと勉強しないといけないですね・・・

13:30 宿題

次の授業は15:00からなので、この時間を使って宿題をやります。前半は、友達に宿題を教えて欲しいと言われたのでその子に宿題の説明をしていました。 "Advanced Computer Vision" という大学院向けの授業で、発展的な内容が多くかなり面白いのですが、先学期に開講されていた "Computer Vision" という授業と比べると歯ごたえがかなりあります。周りの人も「難しい」と思っていることを知るとちょっと安心です。
そのあとは、Friend Center にある工学部図書館に行きました。 f:id:liwii:20200226145403j:plain 正直あんまり好きな場所ではないのですが、授業の合間に訪れる場所としては1番アクセスがいいので、なんだかんだかなりの頻度でここに来ています。

15:00 授業

次の授業は "Programming Language" という大学院向けの授業です。Coq という定理証明支援系を使ってプログラムに関する様々な証明を行います。
まだ始まって3週間ですが、今のところ今期の授業の中では一番好きな授業です。Coq を使った証明はパズルを解くような感覚に近く、大量の宿題も今の所あんまり苦になりません。教えている Appel 教授も、プリンストンに来る前から是非お会いしてみたい方の一人だったので、直接授業を受けられることは本当に嬉しいです。

16:30 Independent Work のミーティング

今学期、僕は Independent Work という教授にアドバイスをもらいながら自分のプロジェクトを進める授業をとっています。そのアドバイスのためのミーティングは毎週月曜日の16:30からなので、授業が終わったらすぐにミーティングに向かいます。
僕の今期のアドバイザーは Kernighan 教授という方で、C言語UNIXなどの現在のコンピュータの基礎にある色々なものに関わっためちゃくちゃすごい人です。ダメ元でアドバイザーを頼んでみたらOKしてくださったので、とても嬉しいと共にちゃんとやらなきゃなあという身が引き締まる気持ちがします。
この日も、30分のミーティングで僕のプロジェクトに対して様々な提案をしていただきました。偉人と言っても過言ではない方なのに、ただの学部生のプロジェクトにしっかりとアドバイスをいただけるのは感動です。
ちなみに、僕が今期取り組んでいるテーマは「プレゼンテーションスライドの生成用のプログラミング言語」です。完成するといいなあ・・・

17:00 一旦帰宅

授業やミーティングなどの予定がだいたい終わったので、一旦部屋に戻ります。 f:id:liwii:20200226134406j:plain 明るかった空がだいぶ暗くなってきてますね。 キャンパスのどこにいても10分くらい歩けば自分の部屋までたどり着けるので、気軽に部屋に戻って一息つくことができます。時にはそれが仇となって無駄に部屋でダラダラしてしまうこともありますが・・・

18:00 夕食

月曜日は Forbes というところの Dining Hall で日本語テーブルというものが開かれています。プリンストンで日本語を学んでいる学生たちが日本語だけを話しながらみんなで夕食をとる、という企画で、僕も日本語を話したいときは参加しています。
プリンストンの外国語のプログラムは非常に厳しく、1年生だと毎日外国語の授業があるそうです。しかしその分上達も大きいようで、まだ1年しか勉強していない子でもかなり流暢に日本語で話すのでいつも驚かされます。僕も英語頑張らないと・・・

20:00 図書館で宿題

ご飯のあとは、Firestone という学校で一番大きい図書館まで行って宿題の続きをやりました。 f:id:liwii:20200226134435j:plain この日やっていた宿題は火曜日の哲学の授業のものです。授業の前に30ページくらいのリーディングがあるので、それをとりあえず終わらせます。
この回のリーディングは割と面白かったので、そこまで苦ではありませんでした。全部を説明するのは難しいですが、簡単に言うと、「黒いカラスをたくさん見ると、『カラスは全て黒い』という確率は高まる気がする。では、白い靴をたくさんみた時この確率は高まるのか?」ということです。皆さんはどう思いますか?

21:30 Murray-Dodge で休憩

集中力が切れたので、Murray-Dodge Hall という場所にある無料でクッキーが貰えるカフェで一休みします。僕はなんだかんだ毎日一回は来ている気がしますね・・・ f:id:liwii:20200226134438j:plain 毎日出てくるクッキーが違うのですが、この日に出てきたのはココナッツとアーモンドのクッキーでした。かなり美味しかったので、また出して欲しいですね。

22:30 帰宅

ちょっとだけ眠くなってきたので部屋に帰ってきました。Murray-Dodge は僕の部屋から近いので、2~3分で部屋まで帰ることができます。授業もここでやってくれればどんなにいいだろう。

23:30 地下で宿題

シャワーを浴びてから一休みするともうちょっと頑張れそうな気がしたので、寮の地下室まで行ってもう少しだけ宿題をすることにしました。わざわざ地下まで降りるのは、地下には熱湯が出る蛇口があるのでお茶を淹れられるからです。 f:id:liwii:20200226134442j:plain その日中に終わらせなければいけないことがある時は、寝る前にこの地下で粘って終わらせることが多いです。

1:30 就寝

宿題が行き詰まったので寝ることにしました。この次の日の朝に急に予定が入ったので、僕にしては早く寝たのですが、最近はもっと遅く2:30くらいに寝ることが多いです(この記事を書いている今も2:30です)。割と1:00 ~ 2:00 くらいになっても地下で宿題をしている子はよく見るので、僕が特別遅いというわけではない・・・と思います。

と、いうわけで1日の流れを書いてみました。少しでも学生生活の雰囲気が伝わるといいなと思います。

次回はクラブ活動の話でもしようかと思っています。それではまた来週。

アメリカの大学でアジア人として暮らすこと

f:id:liwii:20200220135941j:plain 最近、大学の近くに美味しいラーメン屋さんを見つけました。プリンストンには他にもラーメン屋さんがいくつかあるんですが、それらよりもかなり美味しく、また値段も$3ほど安いです(それでも$11しますけどね・・・)。最近は月に2回ほど通っています。心なしかここに通い始めてからメンタルが強くなったような気がします。食べ物って大事だなあ。

今日はプリンストンでアジア人として半年暮らして感じた、人種や民族なんかに関連する話をしたいと思います。もちろんアメリカに半年住んだだけの外国人が語り尽くせるようなトピックでは全くないのですが、できる範囲で個人として思ったことを書いていきたいと思います。

何故この話をするのか

アメリカ社会はよく「多民族社会」といわれます。プリンストンもその例に漏れず、色々な人種・民族の人が学んでいます。大学が公式に在籍学生の人種別の統計を出しているのですが、これによると最も多い白人でもその割合は44%で、その他にも多様な学生が在籍していることがわかります。かくいう僕も、こちらに来てから白人や黒人、ラティーノの友人や、アジアの他の地域からの友人ができました。 これだけ色々なバックグラウンドの人々に囲まれて暮らす経験は人生で初めてでした。
僕の両親は中国で生まれ、中国の大学を卒業した後に日本にやってきました。僕は所謂「移民二世」ということになると思います。とはいっても、僕自身日本で生まれ、5歳の時に家族全員で日本国籍を取得し、日本の小学校・中学校・高校を卒業して、家でも日本語を話しているので、日本人としての自意識がかなり強いです。しかし、僕の名字は「劉」なので、中国系としての自分を意識させられることもそれなりに多く、そのせいか人種や民族といったトピックについて昔から人より関心がありました。
そんな中、先学期にとった授業の一つが Asian American History です。この授業をとった直接の理由自体は「アドバイザーに勧められたから」という受け身のものでした。しかし、アジア人を中心として、アメリカ社会と人種間・民族間関係の歴史を辿っていく内容で、自分の今までの興味や新しくアメリカで見聞きしたこととリンクする部分も多く、本当に面白かったです。
とはいっても、最後にこの授業を受けたのはもう 2ヶ月以上の前で、もう学んだことも頭から抜けかけています。せっかくの経験をこのまま忘れていくのは勿体無い。自分のための備忘録も兼ねて、このテーマで記事を一本書くことにしました。

授業でやったこと

アメリカのアジア人と差別

さて、Asian American History の中で大きなテーマになっていたのは「差別」でした。
最初の授業は1800年代の中国人労働者とそれに対しての差別、そして中国人移民への排斥法案から始まります。その中で、いかに中国人労働者が「狡猾」「残忍」といったパブリックイメージをつけられ、それが日本人やフィリピン人といった後発のアジア労働者にも受け継がれていったかが語られました。
その中で、当時の政府による中国人移民に関する報告書を読むのですが、驚いたのは「欧米人と違って、アジア人には自制心を備えのに十分な脳の容量がないことが 科学的に 証明されている」という記述があったことです。めちゃくちゃな差別ですが、当時の彼らにとっては「合理的」な根拠があったわけですね。
その後およそ100年を経て、アメリカ社会のアジア人へのイメージは変容していきます。新聞などでは「勤勉」「聡明」といった言葉とあわせて描かれるようになり、19 60年代にはアジア人は自分たちの力で差別を打ち破って今の地位を確立した "Model Minority" と呼ばれるようになりました。
そのイメージ通り、現在のアメリカのトップ大学にはアジア人がめちゃくちゃ多いです。2017年の国勢調査によると、アメリカの人口全体におけるアジア人の割合は 5.6 % *1 ですが、先ほどのリンクによるとプリンストン大学の学部生のうちアジア人はなんと25%を占めます。
一方、黒人やラティーノといった他のマイノリティの人々のこうしたエリート校への入学率はいまだに低く、例えばアメリカ全体でのラティーノの人々は18%ほどであるのに対し*2プリンストンにおける今年のラティーノの学部生の比率は12%です(授業で出された統計ではもっと低かった気がするのですが、だいぶ改善されてきていますね)。
とはいえ、こういうマイノリティの方々の低い入学率は彼らが歴史的に差別されてきたことに大きく起因すること、また大学内の人種の多様性を担保するべきであるという考え方から、アファーマティブアクションと呼ばれる措置が取られています。これは、こうした歴史的に冷遇されてきたマイノリティの学生を入試の際に優遇するというものです。多くの場合、アメリカの私立大学の入試は、ペーパーテストだけでなくエッセイや推薦状、高校時代の活動などから判断される多角的なものなので、こういうことが可能なんですね。実際、黒人やラティーノの学生は名門大学に入学するために必要なSAT(センター試験のようなものです)の点数が有意に低い、という研究もあるようですね(ソースを見つけられませんでした)。
こうなると割を食うのは白人学生と、明らかに大学に多いアジア人学生です。最近は、彼らによる「アファーマティブアクションは逆差別である」とする訴訟まで起こっています。「歴史的に差別されてきたマイノリティ」であるアジア人が、「歴史的に差別されてきたマイノリティを優遇するための措置」であるアファーマティブアクションに反対する、という現象が起こっていたりするわけです。
と、ここまでは僕もなんとなく知っていたことだったのですが、授業で面白かったのはこのあとです。教授は "Racial Triangulation" という概念について話してくれました。これは、白人の既得権益層が黒人を自分たちより「劣った」(論文でも "inferior" という言葉が使われています) 人種として、アジア人を自分たちより「外部性の高い (≒ 政治などの社会活動に従事しない)」人種として位置付けることでマイノリティ間の対立を煽り、自分たちの利益を守っている、というものです。
例えば1960年代に出てきた "Model Minority" という言説も、同時期の黒人中心の公民権運動への批判から生まれたという側面があります。「アジア人は文句を言わずに自分たちで頑張ったのに、黒人は権利ばっかり主張してけしからん」という主張のために、アジア人が持ち上げられたわけです。マイノリティを抑えつけるために別のマイノリティが使われたということですね。
先ほどのアファーマティブアクションの話もこれに近いです。実はSATの点数に関してアジア人は白人よりもさらに冷遇されています。また、アメリカの私立大学にはよくOB・OGの子供向けの枠 (Legacy と呼ばれています)や、教授・大学職員による推薦枠があります。これらの枠を使って入ってくる学生は白人の割合がとても多いのですが、そうした人々への批判はアファーマティブアクションへの批判に隠されてしまいます。
また、Model Minority という概念自体がアジア人に不利に働くこともあります。この概念は、「記憶力はいいけど独創的ではない」「寡黙でリーダーシップがない」といったイメージも含んでいるので、企業の役員や政治家のうちのアジア人の比率はかなり低かったりします。こういう分野では逆にアジア人に対するアファーマティブアクションが必要なんですが、大学でのアファーマティブアクションに反対することが自分の首を締めてしまうわけですね。
もちろん差別されて来たマイノリティの方を優遇するのに特に理由はいらないと思います。しかし、そうした優遇に反対することが違う意味でマイノリティとしての自分自身の首を絞めることになる、というのは新しい視点でした。

キャンパスで過ごしていて感じること

アジア人としてのアイデンティティ

先ほどから僕は「アジア人」という言葉を多用しています。アジアというのは本当に広い地域なので、「アジア人」の名のもとに全てを一緒くたにするのはどうなんだ、という批判もあったりしますが、いずれにせよ日々の中でこの分類を意識することはよくあります。例えば、「あの Eating Club にはアジア人が多い」ということを友達に言われたりします。他にも、特定のサークル (こちらでは Club と呼びますが) のメンバーのほとんどがアジア人だった、ということもよくあります。この間僕が見にいった友達のダンスグループの公演でも、出演者の8割以上がアジア系だったような気がします。
僕自身の友人も、交換留学生を除くとアジア人がとても多いような気がします。日本人はもちろん、中国系、韓国系の友人もたくさんできました。やはりアメリカの文化と比べると、彼らの文化は日本文化にすごく近いような気がします。僕はこちらに来た直後、お酒を飲んでクラブで3時まで踊ったり、〇〇を吸ったりするのがそこまで珍しいことではない、という事実に非常に面食らったのですが、そういう戸惑いをアジアの他の国から来た友人とは共有することができました。また、食文化も割と近いものがあるので、アメリカの食べ物に対する愚痴で盛り上がったりすることもあります。
日本にいると、近隣のアジア諸国への反感めいた発言をよく耳にする気がします(僕が立場上敏感なだけかもしれませんね)。しかし、アメリカに来て初めて「アジア」という地域の関連の強さを感じました。みんなで仲良くできればいいのになあ、という小学生みたいなことを最近は考えています。

Japanese American とか Chinese American とか

さて、先ほどは主にアジアの他の国からの留学生の話をしたんですけど、実際にプリンストンで出会うアジア系の学生は「両親がアジアのどこかからアメリカに渡ってきて、自身はアメリカで生まれ育った」という境遇の人がほとんどです。いわゆる "Japanese American" とか "Chinese American" と呼ばれる人たちですね。彼らと話していて驚くのは、アメリカで育ち、アメリカで教育を受けているにも関わらず、自分のルーツがある国の文化への関心がとても高いことです。
例えば言語の面では、親が日本人の子はかなり日本語がうまい場合が多い気がします(聞けば、そのために日本語の補習校に通ったりする場合もあるらしいです)。そんなに得意じゃない子たちも、僕に会うと日本語で話しかけてくれたりするのでちょっと嬉しくなります。僕の従妹は Chinese-Americanなんですけど、彼女も僕と違って中国語はペラペラです。
また、JSA (Japanese Students Association) という、日系の学生を中心にみんなで日本食を食べたりする Club があるのですが、それにもみんな積極的に参加している気がします。CSA(Chinese Students Association)もあるんですが、9月に僕にこれの説明をしてくれた学生は中国に住んだことのない Chinese American でした。
これは僕にとっては結構驚きでした。僕の東大での友達にも結構両親のどちらか(もしくはどちらも)が中国人の人が結構いますが、中国系学生の会があるという話はあまり聞いたことがありません。
これが何故なのかを考えてみると、アメリカでは両親のどちらかが外国からきている人がかなり多い、というのが一つの要因としてあげられると思います。アジア系の学生以外でも、両親、もしくは祖父母のどれかがヨーロッパやアフリカから来ている人はかなり多いです。こうなってくると、「アメリカ人であること」と「日本人/中国人であること」が両立するわけです。アメリカの人の多くは、自分の目に見える範囲で外国とのつながりを持っているのですから。
対して、日本における外国にルーツを持つ学生の数はまだ少ないです。それによってか、日本において自身の「外国人性」を主張すると、周りの人に「非日本人性」の主張として取られることが多いんじゃないかと思います。
例えば僕が「劉」という名字で生活していると、アルバイトを始めるときに外国人のための在留カードの提出を求められたりとか、偉い人に「留学生?日本語うまいね。」といって話しかけられたりとかということがよくあります。彼らは僕の名字が中国人っぽいことから、僕は日本人ではないだろうと考えたのでしょう。悪気はないと思うんですけどちょっと悲しいですよね。
そういう状況であんまり強く自分の中国人性を強く主張する、ましてや中国系の学生会を組織するなんてことは、なんだか日本社会から引き剥がされてしまう気がしてちょっと怖くてできないわけです。実際、両親とも中国人だけど日本人っぽい名字を名乗って生活している友人も多数います。僕自身は、両親が中国出身であることで人にはできない経験もできて、色々なことを考えるきっかけになったので、すごくよかったと思っているんですが、それでも自分の名字について人に何か聞かれた時は少し身構えてしまいます。 アメリカと同じように、いつか日本でも、「外国人」というレッテルを貼られるのを恐れることなく、「僕の両親は関西出身で〜」というときと同じように自然に、「僕の両親は中国出身で〜」と語れる社会になるといいなと思います。

ちょっとまとまりがない感じですが、思っていることを書いてみました。前も言ったように最近ネタ切れ気味ですが、来週も何か面白いものがかけるように頑張ります。

大学院の授業

f:id:liwii:20200213121704p:plain ブログの合計PVが5,000になりました!色々な方に見ていただけて非常にありがたいです。
一応始めた時の目標は10,000PVだったんですけど、このままのペースだとちょっと厳しそうですね・・・。もっと面白い(「面白そうな」の方が大事ですかね)記事を書けるように頑張ります。
と、いっても今週は全然書くことが思い浮かびませんでした・・・苦し紛れに、今学期の履修と絡めて、大学院の授業の話をしたいと思います。

500番台の授業

プリンストンで履修できる授業が学期ごとにまとまっているのがこの "Course Offerings" のページです。
Course Offerings | Office of the Registrar
ここで見られる授業には、それぞれ3桁の番号がふられています。基本的に誰でもどの授業でも自由に取れるようになっているのですが、この3桁の番号の一番上の桁が、「何年生向けか」ということに対応していて、おおよその難しさの目安になっています。例えば、"COS 326 Functional Programming" という授業があったら、この授業は大体3年生向けくらいのレベルだということがわかりますね。
さて、この授業の一覧の中に、500番台の授業がいくつかあります。これらの授業が大学院生向けの授業になっています。プリンストンでは、大学院向けの授業であってもちゃんと学部生向けの Course Offerings に表示され、条件さえ満たせば学部生も履修して単位を取ることができます。 f:id:liwii:20200213121709p:plain
だいぶプリンストンでの生活にも慣れて余裕も出てきたので、僕は今学期500番台の授業を二つとることにしました。

COS 510 Programming Language

COS 529 Advanced Computer Vision

どちらも先学期に履修していた授業の話題をさらに深めるものなので、今のところすごく楽しいです。宿題があんまり多くなりすぎないといいな・・・
どういう学生が履修しているかというと、やはりほとんどは Master か Ph.D の学生のようです。しかし、どちらの授業にも5人前後の学部生が出席しているような気がします(彼らとは先学期も同じ授業を取っていたので見たことがあります)。学部生でも上のレベルの授業を気軽に取れるのは素直にいいところだと思います。

履修する方法

さて、そんな500番台の授業ですが、普通に履修登録ページから履修しようとするとこんな感じでシステムに弾かれてしまいます。 f:id:liwii:20200213122019p:plain
要するに、学部生が大学院の授業をとるには許可が必要だということです。そしてその許可を得るためには、以下のようなフォームを埋める必要があります。 f:id:liwii:20200213122321j:plain このフォームに自分の名前と履修する授業の名前、履修する理由を書いて、

  • 担当の教授
  • 自分の所属する学科の学生部の人(僕の場合は Department of Computer Science)
  • 自分の所属する学生寮の学生部の人(僕の場合は Wilson College)

のサインをもらうことで、初めて履修が認められるわけです。
参考までに、Department of Computer Science とWilson College の写真です。(全然うまく撮れなかった・・・)

f:id:liwii:20200213122325j:plainf:id:liwii:20200213122328j:plain

この中の誰かが、「この学生ではこの授業についていくのが難しい」と判断した場合、許可が降りないということになります。ですが、学生部の皆さんは教授のサインを見ればすぐにサインをしてくれるような気がします。 また、関連する学部の授業でそれなりの成績を取っていれば、基本的に教授も履修を許可してくれるようです。少々面倒臭いことを除けば、500番台を履修するためのハードルはあってないようなものだと言えます。

事件(おまけ)

さて、通常はこのような流れで500番台の授業を履修登録するわけですが、実は僕が先日履修登録ページから COS 529 を試しに登録してみたところ、なんと普通に登録が完了してしまいました。聞いていた話と違うなあと思いつつも、正直許可をもらうのはちょっと面倒臭かったので、気にせずその日は寝ることにしました。
すると、次の日の朝に学部の方からこんなメールが届きました。 f:id:liwii:20200213142624j:plain 要は一回学部に立ち寄れということです。やっぱりサインがないとダメか、そう思いながら事務の方の部屋に入ると、

「Deng教授が、あなたにサインしてないのにあなたが履修登録してると言ってるわ」
「嘘をつかないで、本当のことを言いなさい」
「あなたサインを偽造したでしょう」
「場合によっては Honor Committee (カンニングの裁判所みたいなところ)にいくわよ」

と、大変な勢いで詰められました。どうやら、僕が虚偽のフォームを提出して履修登録に潜り込んだと思われたようで、いくら「なんか登録したらできた」と説明しても、
「私はこの仕事を10年以上やっているけど、そんなことは見たこと無いわ 」
「システム上そういうことは起こらないようになってるの」

と、全く取り合ってもらえませんでした。確かにサインをもらうのを面倒臭がった僕が悪いのですが、ろくに説明も聞かずに犯罪者のような扱いをされるのはちょっと悲しかったですね・・・
もちろん僕の書いた虚偽のフォームなどというものは見つからないため、最終的に疑いは晴れ、僕は改めてサインを全部もらって、無事に履修登録を完了することができました。皆さんも、必要な手続きはちゃんと踏むようにしましょうね(?)

最近「毎週水曜投稿」という習慣が崩れつつありますが、次回はちゃんと間に合うようにしたいですね。それでは、また来週。