princeton.log

Princeton 大学の Department of Computer Science に一年留学する日本人が、学んだことや感じたことを綴ります。

プリンストン大学の新型コロナウィルス対策、そして・・・

プリンストンにも春がやって来ました。ここのところ青空が広がる天気が続き、キャンパスの木々には花が咲いたりしています。 f:id:liwii:20200311170417j:plain そんなとてもいい季節に、世界中で感染が拡大している新型コロナウィルス (COVID-19) の影響がプリンストンにもやって来てしまいました。今日は、この1ヶ月でプリンストンに何が起こったのか、そして現在はどういう状況なのかをお伝えしたいと思います。

2月初頭

2月の初めのの方と言えば、中国の感染者がかなり増え、日本でもコロナウィルスがかなり大きく報道されるようになって来た頃だと思います。
そんな中、春学期を迎えたばかりのプリンストンでコロナウィルス関連のニュースを聞くことはそこまで多くはありませんでした。一応、学期の間の休みに中国に行っていた学生に対しては14日間の自室待機指示が出ていたようですが、特にそれ以外の学生の生活に支障が出るようなことはなかったと思います。
このころの僕は、友人やSNS経由で流れてくる日本のニュースを見てもあまり実感が湧かず、むしろ「大変な時期に日本にいなかったのはラッキーかもしれない」と不謹慎ながら思ったりもしていました。

2月末

このころになると、プリンストンでもコロナウィルスに関連した出来事がちょくちょく起こるようになりました。
例えば、様々な国への交換留学プログラムがキャンセルされたことが挙げられます。すでにイタリアに留学していたプリンストンの学生は強制帰国を命じられ、中国や韓国などの国への予定されていた留学は全てキャンセルになりました。
そして日本も例外ではありませんでした。ちょうどこのころ、東大からの留学生2人とプリンストンから東大へ行く予定の学生で晩御飯を食べる予定を立てていたのですが、当日になって彼女に東大への留学が中止になった旨を伝えられ、ものすごく申し訳ない気持ちになったのを覚えています。

3月4日

3月に入ってからは大学からコロナウィルス関連での通達がそこそこ頻繁にくるようになりました。
その一つが3月4日に来たものです。大雑把に内容をまとめると、「中国、韓国、イタリアには絶対行くな。その他の国に関しても、特にアジアやヨーロッパの国々への不必要な旅行は控えてくれ」というものでした。ちょうど2週間後に春休みを控えていたので旅行を計画していた学生が多く、キャンセルになって残念だという声が周りでちらほら聞かれました。
かくいう僕も、スイスに旅行に行く予定だったのですが変更を余儀無くされました。まあ残念だが仕方ない、勉強を続けられるだけありがたい、というようなことを思っていた気がします。

3月7日

この日は月曜日だったのですが、前々日の土曜日にニューヨーク州で非常事態宣言がなされました。
Coronavirus in N.Y.: Cuomo Declares State of Emergency - The New York Times
ニューヨークとプリンストンはほぼ電車一本で繋がっているため、こうなってくるともう人ごとではありません。日本にいる家族や友人から心配の連絡もちょくちょく入ってくるようになりました。
しかし、キャンパスでの生活に変化はありませんでした。いつも通りの時間に起き、ダイニングホールでご飯を食べて、宿題をして、いつも通りの時間に寝る。極力ニューヨークに行かないようにする以外、特に変えなければいけないことはないように思われました。

3月9日

朝起きるとメールが届いていました。要約すると「今日から全ての授業は原則ビデオ通話で行う。この措置は春休みを挟んで3週間続く。春休みに帰宅する学生は極力自宅で待機するように」ということでした。
これは流石に衝撃でした。今日から教室に行く必要がなくなるのです。
とはいえ、各教授によって対応はまちまちで、この日は普通に授業をする教授も多かったです。例えば僕の受けている授業は全て教室で行われました。中には「こんな対応は馬鹿馬鹿しい。春休み明けからビデオ授業になるけど、この教室でビデオをとるからこっそり座っててもバレないよ」なんてことをおっしゃる教授もいました。

3月10日

前述の教授も含め、僕が履修している授業の教授全員から「明日からの授業は全てビデオです」っていうメールを送って来ました。
また、ハーバードが全ての学生に対して5日以内に待機するように命じたとするニュースも入ってきました。

edition.cnn.com

この日には、学生の間でも「ハーバードのようにプリンストンも全学生が退去になるのではないか」という噂が立ち始めました。この日の晩御飯は他の国からの交換留学生たちと一緒に食べたのですが、「もし追い出されたらどうするか」について話している時間が長かったように思います。

3月11日 (今日)

さて、時差の関係でこちらはまだ3月11日です。今日はキャンパスの至る所で大きな変化が見られました。
まず、アルコール消毒液を出す機械がキャンパスのそこかしこに置いてありました。
f:id:liwii:20200311174900j:plain 月曜日まではなかった気がするので驚異的な対応スピードですね。
ビデオ授業も始まりました。
f:id:liwii:20200311154514j:plain 少しでも快適に授業を受けようと、寮の地下室のモニターにビデオを繋いだ様子です。
内容がわからないことはないのですが、質問・発言をするハードルがものすごく上がるので少し窮屈に感じました。この授業では教授が簡単な2択の質問を出して生徒が答える、という場面がよくあります。教室で授業をしていたころは手をあげればよかったのですが、ビデオ通話だとみんなが一人ずつ "Yes" "No" と自分の意見を言うので非常にシュールでした。
また、料理を自由にとる形式だったダイニングホールでも、

  • 基本的にダイニングホールのスタッフの方に頼んで取ってもらう
  • 自分でとる形式の料理にはラップをする

などの対策が取られていました。 f:id:liwii:20200311124122j:plain f:id:liwii:20200311123917j:plain

また、いつもは賑やかな夜のダイニングホールは、料理の種類・きている学生の量共に大変寂しい状態になりました。 f:id:liwii:20200311193756j:plain

そして・・・

20:02

プリンストンから最後通牒が来ました。このメールを要約すると、

  • 家に帰れる学生は3/19までに寮を完全に退去すること
  • 残りの授業は学期が終わるまで全てビデオで行われる

ということになります。みんな薄々予期していたことなのでそこまでパニックにはならなかったのですが、それでもだいぶ早く来てしまった今年度の終わりを悲しむような声が聞かれました。
一応、CDC Warning Level 2 以上の国から来ている学生は残っても良いそうなので、Level 2の日本から来ている僕もキャンパスに残る申請をするつもりです。ですが、ここのところ状況が変わるスピードが早すぎるので、100%キャンパスに残れるのかは僕にもよくわかりません。
いずれにせよ、ほとんどの学生はプリンストンからいなくなってしまうので、僕のプリンストンでの「学生生活」はここでおしまいですね・・・このような形で突然終わりが訪れるとは1週間前には思ってもみませんでした。今思えば後悔もありますが、人の力の及ばないものなので仕方ありません。

さて、プリンストンでの生活もこのブログもどうなるかは今の所全くわかりませんが、続報が入り次第またお伝えしようと思っています。日本にいる皆様、耳にタコができるほどお聞きになっているとは思いますが、手洗いなどの対策をしっかりをして、感染に十分お気をつけてお過ごしください。