princeton.log

Princeton 大学の Department of Computer Science に一年留学する日本人が、学んだことや感じたことを綴ります。

協定校への出願と受け入れ確定後の手続き~交換留学生になるまで(2)

学内選考のその後

前回の記事 で、東京大学内での交換留学への応募の流れについて説明しました。10月末の出願締め切りから3ヶ月待つと、PDFでこんな感じの表がが届いて、自分が推薦していただける学校がわかります。 f:id:liwii:20190902142031p:plain しかし、ここまではあくまで「東京大学から交換留学生として推薦してもらえた」というだけのこと。ここから、現地の協定校による受け入れ可能かどうかの審査が始まります。
今回は、実際に現地に行って授業を受けることが可能になるまでのそんな諸々の手続きについて話していきたいと思います。

協定校での選考

応募の流れ

(ここからの流れはおそらく協定校ごとに大きく違います。ご了承ください。)
学内審査の結果通知からしばらく経つと、協定校への申請手続きについて東京大学からメールが届きます。この時期は協定校ごとに違い、だいたいその学校の申請締め切りの1ヶ月ほど前になることが多いようです。僕の場合は、プリンストン大学への交換留学生の出願締め切りは4/7、東大からメールが届いたのは3/7でした。
その直後、プリンストン大学からもメールが届き、交換留学生の申請用のWebページへのログインを指示されます。以降は必要書類を作成してはそのWebページのフォーム上に投稿する、を繰り返すことになります。
この段階で提出する書類は、ただでさえ馴染みの薄いものがいくつかあります。Webページ上の少量の英語のみでこれらの趣旨を理解し、提出するのは個人的には難易度が高かったです。
また、東大の担当者の皆さんは全協定校の出願プロセスを把握しているわけではないので、疑問点については協定校の担当者と直接やりとりすることになります。実際に現地の大学を訪れるわけにはいかないので、疑問点について質問できる手段は基本的にメールのみです。
これも大変でした。メールを英語で作ることについてもそうですが、何より大変なのは担当の方の返信の気まぐれさ。たまにその日中に返信が帰ってくることはありますが、基本的に質問への返信があるのは2~3日後です。やりとりして疑問点を掘っていくと平気で1週間以上経ってしまうので、1ヶ月しかない出願期間においては非常に悩みのタネでした。中でも、締め切り1週間前に送ったメールに「私今国外にいるから来週対応するね」と返された時には頭を抱えました・・・
交換留学なので、基本的には東京大学の審査に通れば協定校に拒否されることはほぼないのですが、僕の場合は後述の理由も相まって非常にこの期間のトラブルが多かったです。

必要書類

ここでも、提出した書類のうちいくつかをピックアップしてお伝えします。

Exchange Program Essays

一応、英文エッセイの提出を要求されました。テーマとしては、

  • 自分について簡単にまとめる
  • この交換留学の目標を書く
  • 予想される困難と、それをどう乗り越えるかを書く

が提示され、2ページ以内にまとめるように指示されました。
正直この時点では「どうせ通る」とたかをくくっていたのと、2ページという分量の少なさもあって、

  • 自分の幼少期からの簡単な生い立ち
  • 留学先で取りたい授業など
  • なんか外国大変だけど頑張るぞ的なこと

をかなり適当にまとめて提出しました。どの程度見られているのかはよくわからないですね・・・

Resume/CV

Resume(簡単な履歴書のようなもの)の提出を要求されました。僕はこの出願まで知らなかったのですが、米国の大学院では出願者に提出を課すことがあるようですね・・・
レジメ
学部の2年生に書けることなどたかがしれているので、僕は

  • 住所氏名などの基本情報
  • 高校、大学の在籍期間情報
  • ちょっとした職歴と受賞歴

を、1ページのPDFにまとめて提出しました。

Exchange Student Application for Visa Certificate (AVC)

アメリカに長期間滞在するためにはビザが必要です。ビザ取得のためには、滞在する大学に、自分がその大学で学ぶためにアメリカに滞在することを示す I-20 Form という書類を発行してもらう必要があります。
I-20 Formの取得方法とビザ申請の流れ
この発行のために、必要事項をフォームに記入する必要があります。フォーム自体の項目はすぐに埋めることのできるものばかりですが、財政能力証明書を添付する必要があるので注意が必要です。
学生ビザはあくまで勉強するために発行されるので、大学側が概算した留学中にかかる費用を問題なくまかなうことができることを示さなくてはならないのです。多くの場合、その金額の入った預金残高証明書が使われます。
僕がこのことに気づいたのは締め切りの二週間前でした。しかも、ほとんどの銀行で預金残高証明の発行には一週間以上かかります。
さらにプリンストン大学から提示された金額は日本円にして200万円以上。両親に相談してみたところ、直近で出費が重なり、現金でそこまでの持ち合わせはないということでした。両親がその後すぐ現金を工面して証明書を発行してくれたのでことなきを得ましたが、危ないところでした。両親には感謝してもしきれません。

Transcript

成績表のことです。東大への出願と同様に、印刷してスキャンして提出すれば終わりです・・・ なんですが、これに本当に苦しめられました。
東京大学では2年生の夏に学生が学科に振り分けられ、そこから専門的な学習が始まります。そのため、専門的な科目が始まるのは2年生の後期からです。実際に僕も、2年生の前期まではほとんど情報科学系の授業を履修していませんでした。
大学のシステム上、僕が成績表を出力した4月初頭時点ではまだ2年生後期の成績表の発行が不可能でした。そのため、僕は専門科目の含まれない2年生前期の成績表のみを提出しました。
すると締め切りの二週間後、「本日こちらに来ていただくことは可能でしょうか」以外に一切要件の書かれていない不穏なメールが東京大学の国際交流課から届きました。向かってみると、

  • プリンストン大学から受け入れ不可のメールが来たこと
  • 専門科目をほとんど履修していないため、現地のDepartment of Computer Science の授業についていけるかわからない、というのが主な理由の一つとして書かれていたこと

を伝えられました。これを聞いたときは生きた心地がしなかったです。
国際交流課の皆さんに、時期の関係で提出できなかった成績表があり、そこではほぼ専門科目を履修していたことを伝えたところ、それを提出した上で再び受け入れてもらえるよう掛け合っていただけることになりました。
そこから、自分が専門科目に十分キャッチアップできることを示すために、成績表の提出以外にも

  • 先学期に授業を履修した先生に頼んで推薦状を書いていただく
  • 今学期に履修中の授業のシラバスを自分で全て英訳する

など、専門性が示せそうな書類をいくつか作成し、東大の国際交流課経由でプリンストン大学まで送付し、先方の反応を待ちました。(余談ですが、参加必須の東京大学の交換留学内定者交流会があろうことかこの期間に開かれました。明るい顔で留学への希望を語る他のみんなを、僕はどういう表情で見ればいいのかわかりませんでした・・・)
一週間後に、結果が覆り受け入れていただけることになったことを国際交流課経由で知ったときは本当にほっとしました。このドタバタした一週間の間、様々な方々に助けていただいたおかげです。
他にも、同様のトラブルを友人から何件か聞きました。これから出願する皆さんは、僕のような無用なトラブルに巻き込まれないためにも、専門科目の成績表は必ず提出することをお勧めいたします。自分の今の学部と別の学部で学びたいと考えている方は、前々から念のため関連する授業を履修しておくといいかもしれません。

その後

このように、なんやかんやでプリンストン大学に受け入れていただくことができました。ここから実際に渡航するまでにも色々と手続きがあったので、いくつか紹介します。

ビザの取得

受け入れが決まるとI-20 Form が郵送されてきます。そうすると、アメリカへのビザを申請することが可能になります。基本的には、

  • ビザ申請書を書く
  • 各種申請料金を支払う
  • ビザ面接を予約する
  • 大使館・領事館に面接に行く

という順で手続きを進めることになると思います。
詳しい手続きに関しては、こちらの動画でアメリカ大使館 公式ソーシャルメディア親善大使の豆夢(とむ)くんが解説してくれているので、割愛したいと思います。


オンラインビザ申請書DS-160の作成方法【米国大使館公式ビデオ】

(何をどう考えたらこんなデザインのキャラクターが生まれるんだろう、と思っているのは内緒です・・・)
ちなみに、ビザ面接ですが、赤坂にある大使館では非常にたくさんの人が受けにきていて、予約した時間から1時間ほど待ちました。時間に余裕のあるタイミングに予約を入れるのがいいかと思います。その割には、面接自体は30秒ほどで終わってしまいました。交換留学だとほとんど不法滞在のリスクがないので、基本的に通さない理由がないのかもしれませんね。

予防接種

プリンストン大学の保健センターから、入学に当たって受けていてほしい予防接種のリストが送られてきます。それに従って随時注射を打っていく必要があります。僕は今回、

のワクチンを接種しました。
大学から送られてくるワクチンのリストは、日本語ですら聞き馴染みのない病気の名前が英語で並んでいます。自分で一つ一つ調べていくのは大変です。海外渡航用の予防接種を一括して取り扱っている医療機関がいくつかあるので、そこにリストを渡してお任せするのがいいかと思います。僕は東京大学の保健センターでほぼ全てのワクチンを接種してもらいました。
注意点としては、まず値段が高いことです。ここであげたワクチンはほぼ4~5000円以上の価格で、中でも髄膜炎のワクチンは2万円と非常に高価です。親御さんなどに払っていただく場合はあらかじめ伝えておきましょう。
また、例えばB型肝炎のワクチンは3回接種が必要で、また1回ごとの間隔も決まっています。早めに接種を始めないと3回分間に合わないので、出来るだけ早めに相談にいくことをお勧めします。僕は結局A型肝炎B型肝炎の接種が終わらず、アメリカで改めて予約をとって接種を受けなくてはなりません。めんどくさいなあ・・・
最後に少し余談ですが、B型肝炎髄膜炎のワクチンは筋肉注射という方法で接種されます。インフルエンザワクチンなどの皮下注射とは違って、直接筋肉に針を刺して薬液を注入します。普通に痛いです。覚悟しておいてください。

と、いうわけで交換留学の申請手続きについて説明しました。実は今日の朝のフライトで渡米するので、次回の記事では現地の生活について少しお伝えできるかなと思います。お楽しみに!